マンションのエレベーター交換の進め方

マンションのエレベーター交換(リニューアル)では、工法や工期といった工事そのものの検討に加え、「総会でどの決議が必要か」「費用をどう負担するか」「住民へどう周知するか」といった、マンションならではの手続きが関わってきます。

本記事では、エレベーター専門会社の立場から交換工事の基本を解説するとともに、決議・資金・住民対応について一般的に知られている流れを紹介します。

※管理組合の運営や資金計画に関する個別の判断については、各マンションの管理規約や、国土交通省・公益財団法人マンション管理センターなどの公的な情報をご確認ください。

マンションのエレベーター交換、まず知っておきたい「決議」のルール

ここでは、区分所有法や国土交通省の公表資料をもとに、エレベーター交換に関して一般的に知られている決議の考え方を紹介します。実際の決議要件は各マンションの管理規約で定められているため、あくまで一般論としてご覧ください。

既存設備の更新(交換)は普通決議で進められるのが一般的

マンション管理組合の総会決議には、主に「普通決議」と、より多くの賛成を必要とする「特別決議」があります。普通決議は、総会に出席した区分所有者およびその議決権の各過半数で決するのが基本とされています。

既存のエレベーターを同等の性能で更新(交換)する工事は、一般的に共用部分の「著しい変更」にはあたらないと解されており、普通決議の対象とされるのが一般的です。

新設や仕様の大幅な変更は特別決議が必要になることも

一方、共用部分の形状や効用を大きく変える工事は「著しい変更」にあたり、特別決議(原則として4分の3以上の多数)が必要とされています。

なお、2026年4月に施行された改正区分所有法では、決議を総会出席者の多数決で行える仕組みが導入されたほか、バリアフリー化のために必要な共用部分の変更(例:階段しかない建物へのエレベーター新設)については、多数決要件が4分の3から3分の2に緩和されています。

対象の工事がどの決議に該当するかは、工事内容や各マンションの管理規約の定めによって判断が分かれます。議案の検討に入る前に、管理規約の該当条文と公的機関の公表情報に目を通しておきましょう。また、判断の前提となる「既存設備の更新にとどまるのか、新設・増設を伴うのか」といった工事の範囲は、現地調査のうえで弊社からご説明できます。

参照元:公益財団法人マンション管理センター(https://www.mankan.or.jp/06_consult_arc/03_operation/0302_rally_27298.html)

参照元:国土交通省「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」【PDF】(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001971529.pdf)

対象のエレベーターが「古い」と感じたら確認したい交換時期の目安

「設置から20年以上が経過している」「部品供給終了の案内が来ている」「不具合が増えている」など、いずれかの条件に該当する場合は、交換を検討する目安のひとつとされています。まずは対象のエレベーターの設置年と、直近の点検報告書の指摘内容を確認しておきましょう。判断の詳細な考え方については、以下の記事よりご確認ください。

工法により異なるエレベーターの交換(リニューアル)費用

エレベーターの交換(リニューアル)には、すべてを入れ替える「全撤去」、レール等を残す「準撤去」、制御盤や巻上機など主要部を更新する「制御(部分改修)」という3つの選択肢があり、それぞれ費用や工期が異なります。

工法 主な工事範囲 費用・工期の傾向
全撤去 かご・レール・機器などをすべて入れ替える 最も大きい
準撤去 レール等を残し、それ以外を入れ替える 全撤去と制御(部分改修)の中間
制御(部分改修) 制御盤や巻上機など主要部を更新する 比較的抑えやすい

一般的に、費用・工期ともに「全撤去 > 準撤去 > 制御(部分改修)」の順に大きくなる傾向があります。ただし、制御(部分改修)は既存設備の状態や機種によっては対応できない場合があるほか、安さだけを優先して工法を選ぶと、残した部分が早期に劣化して追加工事が必要になるケースもあります。

実際の費用は、機種・階数・既存設備の状態などによって大きく異なるため、現地調査を行わなければ正確な金額は算出できません。弊社では現地調査からお見積もりまで対応しています。まずは対象のエレベーターに適した工法と概算費用を確認するところから始めましょう。

確認項目 費用への影響
対象エレベーターの基数(1基/複数基) 基数によって工事の進め方や工程が変わることがあります。
建物の階数区分(低層・中層・高層) 昇降距離やかご仕様により、費用が変動することがあります。
既存設備の仕様・過去の改修履歴 独自改造がある場合、追加調査・調整が生じることがあります。
搬入経路・仮設養生の条件 エントランス幅や駐車場の使用制限など、建物条件により変動することがあります。
複数基の発注時期 複数基を同時期に発注するかどうかで、工程や費用が変わる場合があります。

※具体的な金額はマンションごとの条件によって異なるため、現地調査のうえでの見積もりが必要です。竣工図書や過去の改修履歴が手元にあれば、現地調査の際にご用意ください。

交換費用の財源として一般的に挙げられる方法

分譲マンションのエレベーター交換では、修繕積立金を財源とするのが一般的ですが、残高が不足する場合には、以下のような方法がとられることもあります。どの方法を選ぶかは管理組合での判断となるため、ここでは一般的に知られている方法として紹介します。

修繕積立一時金を徴収する

毎月の修繕積立金とは別に、工事費の不足分を区分所有者から一時金として臨時に徴収する方法です。負担額は専有面積の割合などに応じて按分されるのが一般的ですが、徴収の方法や負担割合は管理規約で定められていることが多いため、該当する条文を確認しておきましょう。

金融機関からの借入

修繕積立金や一時金だけでは不足する場合に、金融機関からの借入が利用されることもあります。例えば住宅金融支援機構では、分譲マンションの管理組合向けに、共用部分のリフォーム工事を対象とした融資制度(マンションすまい・る融資)が用意されています。保証機関の保証を利用することで担保が不要となる点や、全期間固定金利である点が特徴とされています。エレベーター交換が対象に含まれるかは工事内容によって異なるため、対象工事や条件は住宅金融支援機構の公式情報で確認しておきましょう。

参照元:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資(管理組合申込み)」(https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/mansionreform/index.html)

長期修繕計画上の工事費の時点も確認を

長期修繕計画に計上されているエレベーター更新の工事費が、計画作成時点の情報のまま見直されていないケースも見られます。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、長期修繕計画を5年程度ごとに見直すことが望ましいとされています。計画に計上されているエレベーター更新の時期・費用が、いつ時点の情報に基づくものかを確認しておきましょう。現時点の概算費用は、現地調査に基づくお見積もりで把握できます。

参照元:国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」(https://www.mansion-info.mlit.go.jp/qa/mansion-management/repair-renovation/467/)

総会での検討に向けて、エレベーター会社から得ておきたい情報

総会や説明会では、工事の内容や期間、生活への影響などについて区分所有者から質問が出ることが一般的です。ここでは、検討の材料として、エレベーター会社から事前に得ておきたい情報を紹介します。

工事内容・工期・運休期間

工法の内容、工事全体の期間、エレベーターが使えなくなる運休期間、工事中の安全対策などは、住民の関心が特に高い項目です。見積もりを依頼する際に、これらの情報もあわせて書面で受け取っておきましょう。

工法ごとの違い

費用負担や運休期間への懸念が出た場合に備え、検討している工法以外の選択肢についても、工事範囲・工期・その後の保守への影響などの違いを把握しておくと、検討の材料になります。対象のエレベーターで選択できる工法を、現地調査の際に確認しておきましょう。

工事に使う製品の製造元

「どのような工事になるのか」は工事期間だけのことですが、工事の後、何十年にもわたって影響があるのは、製品の製造元です。保守会社が変わっても、製造元に直接連絡できるのか、耐用期間中はスムーズに部品が供給されるのか、製品の保証サポートはどこまでしてもらえるのか、を確認しておきましょう。

検討開始から着工までの流れ

一般的には、現地調査・見積もり取得から、理事会での検討、総会決議を経て、契約・着工へと進みます。工事会社の側でも、現地調査から見積もり提出、機器の手配までに一定の期間を要するほか、着工後は工法によって数日〜1か月以上の運休期間が必要になります。部品供給終了の予告を受けている場合などは、余裕を持って現地調査を依頼しておきましょう。

住民(区分所有者・入居者)の方への配慮

工事期間中の周知

一般的には、運休の期間・時間帯を、掲示板や回覧板など複数の手段で事前に告知する方法がとられます。周知の内容を固めるために、具体的な運休日時を含む工程表を、着工前に工事会社から受け取っておきましょう。

高齢者・車いす利用者への配慮

運休期間中は階段の利用が増えるため、高齢者や車いすを利用する住民への配慮が求められます。荷物の運搬や緊急時の連絡先の周知などが、配慮の例として挙げられます。運休が生活に与える影響を見積もるためにも、運休の日数と時間帯を事前に確認しておきましょう。

複数基あるマンションは1基ずつ順番に工事するのが基本

エレベーターが複数基あるマンションでは、1基ずつ順番に工事を進めるのが基本です。工事中も残りのエレベーターは通常どおり利用できるため、建物内の移動手段がすべて止まることはありません。

「工事期間中も別のエレベーターが使える」という点は、住民へ工事を説明する際の安心材料になります。対象のエレベーターの基数に応じた工事の順番と、1基あたりの工期を、現地調査の際に確認しておきましょう。

分譲マンションと賃貸マンションでの進め方の違い

分譲マンションでは、一般的に区分所有者が積み立てた修繕積立金から費用を拠出し、総会決議を経て工事を進めます。一方、賃貸マンションではオーナーが自己資金や借入で費用を負担し、オーナーの判断で工事を進められるため、意思決定のプロセスは分譲に比べて早い傾向にあります。

ただし、入居者への告知や工事期間中の配慮が必要な点は、分譲・賃貸ともに共通です。いずれの場合も、入居者への告知に備えて、運休期間の目安を早めに工事会社へ確認しておきましょう。

業者選びで確認しておきたいこと

エレベーター交換の依頼先は、一般的に「メーカー系」と「独立系」に大別され、対応できる機種の範囲や保守体制に違いがあるとされています。業者を選ぶ際には、費用だけでなく、次のような点もあわせて確認しておきましょう。

  • 対象のエレベーター(メーカー・機種)に対応できるか
  • 工事後の保守・点検を誰が担うのか
  • 改修後に交換部品をどこから調達でき、製造元としての責任を誰が負うのか

独自仕様で改修されたエレベーターは、その後の部品調達や保守会社の切り替えが難しくなる場合があります。目先の工事だけでなく、交換後に長く使い続けることを見据えて確認しておくことが大切です。弊社は、メーカー系・独立系のいずれとも異なる「第3の選択肢」です。詳しくは以下のページをご覧ください。

マンションのエレベーター交換に関するよくある質問

Q. 交換費用に補助金は使える?

自治体によっては、省エネ改修やバリアフリー改修などを対象とした補助制度が用意されている場合があります。制度の有無や条件は自治体・時期によって異なるため、対象の自治体の公式情報や窓口で確認しておきましょう。予定している工事が省エネ・バリアフリーなどの要件に該当しそうかどうかは、工事内容を踏まえて弊社からご説明できます。

Q. 工事期間中、エレベーターの代わりになる移動手段はある?

エレベーターが複数基ある場合は、1基ずつ順番に工事を進めるのが基本のため、工事中も残りのエレベーターを利用できます。1基のみの場合は、運休期間中は階段を利用することになります。運休期間は工法によって大きく異なるため、階段の利用が難しい住民がいる場合は、運休の日数と時間帯を事前に工事会社へ確認しておきましょう。

Q. 総会の決議が否決されたらどうなる?

一般的には、否決の理由を踏まえて内容を見直し、あらためて総会に諮る流れになります。なお、エレベーターの観点では、交換が先送りになった場合でも、法定検査や日常点検で指摘された不具合への対応は引き続き必要です。直近の点検報告書に、早めの対応が求められる指摘事項がないか確認しておきましょう。

Q. 費用は区分所有者全員が同じ金額を負担するの?

一般的には、管理規約に基づき、専有面積の割合に応じて負担額を按分する方法がとられます。ただし規約の定め方によって異なるため、実際の負担割合は管理規約の該当条文で確認しておきましょう。

まとめ|まずは対象のエレベーターの状態把握から始めよう

マンションのエレベーター交換では、工法・費用の検討とあわせて、決議要件の確認や費用負担の検討、住民への周知といったマンション特有の手続きが関わってきます。こうした検討の前提となるのが、対象のエレベーターの現状と、適した工法・費用の把握です。まずは設置年と点検報告書を確認し、現地調査で現状を把握するところから始めましょう。

弊社は、メーカー品質を備えつつ複数メーカーの既設エレベーターに対応する「第3の選択肢」を創り出しました。「メーカー系か独立系か」という二択にとらわれず、部分改修から全撤去まで、対象のエレベーターの状態に応じた交換のかたちをご提案します。エレベーターの状態確認から工法のご提案、お見積もりまで対応します。他社からの切り替えもお任せください。

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