エレベーターの耐用年数について

「エレベーターの耐用年数は17年」という情報を目にする一方で、「実際は20~25年使える」という情報もあり、どちらが正しいのか判断に迷う管理組合・オーナーは少なくありません。本記事では、2つの「耐用年数」の違いを整理したうえで、対象のエレベーターがいまどの段階にあるのかを確認するポイントを、エレベーター専門会社の視点で解説します。

エレベーターの耐用年数には2つの種類がある

ひとつは、国税庁が定めるエレベーターの法定耐用年数(17年)です。これは減価償却を計算するための会計上の数字であり、「17年で使えなくなる」という意味ではありません。もうひとつは、実際に安全に使用できる年数の目安となる計画的耐用年数(20~25年)です。まずはこの2種類の数字が別物であることを押さえておきましょう。

法定耐用年数(17年)とは何か

減価償却のための会計上の年数

法定耐用年数とは、税法上の固定資産価値を計算するために国税庁が定めた年数です。エレベーターの場合は17年とされていますが、これは会計処理上の指標であり、設備としての安全性や機能を保証する年数ではありません。

「17年を超えたら交換しなければならない」わけではない理由

法定耐用年数の経過は、法律上の使用制限を意味するものではありません。17年を過ぎても、点検・保守を続けながら使用されているエレベーターは数多く存在します。判断材料となるのは、次に解説する「実際に使える年数」と、日常の点検結果です。対象のエレベーターの設置年を、まず確認しておきましょう。

実際に使える年数(計画的耐用年数)の目安は20~25年

BELCA(ロングライフビル推進協会)の指針による目安

公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)のライフサイクルコスト(LCC)評価指針では、エレベーターの計画的耐用年数(期待耐用年数)が約20~25年、主要機器の平均耐用年数は約20年とされています。主要機器の平均耐用年数を踏まえ、設置から20年前後がリニューアルの時期や予算を考え始めるひとつの目安とされています。対象のエレベーターが設置から何年経過しているか、確認しておきましょう。

法定耐用年数と実際の年数を混同しないための考え方

会計上の年数(17年)と、実際の安全性・機能面での年数(20~25年)は目的が異なる指標です。どちらか一方だけで判断せず、設置年・法定点検の結果・部品供給状況など複数の視点を組み合わせて判断することが大切です。点検報告書と設置からの経過年数の両方を、あわせて確認しておきましょう。

部品・機器別に見る耐用年数の違い

主要機器の耐用年数の目安

エレベーターは複数の機器・部品で構成されており、それぞれ耐用年数の目安が異なるとされています。

部品・機器 耐用年数の目安
制御盤 約20年
巻上機(モーター) 約20~30年
非常用バッテリー 約3年

※上記は業界内で一般的な目安として紹介されている数値であり、実際の交換時期は使用状況や機種によって異なります。

対象のエレベーターで主要機器がいつ交換されたかは、点検報告書や過去の工事記録で確認しておきましょう。

部品の供給終了は寿命のサイン

メーカーによる部品の供給終了は、寿命のサインのひとつです。特に電子装置は技術進歩が早く、モデルチェンジによって交換部品が手に入らなくなると、故障しても修理できない場合があります。メーカーが供給終了を予告するのは実際の終了時期の数年前となることが多いため、供給終了の予告があった場合はリニューアルを具体的に検討する時期とされています。部品供給期限が予告されていないか確認するようにしましょう。

稼働頻度や設置環境によっても劣化の進み方は変わる

同じ機種のエレベーターであっても、稼働頻度や設置環境によって劣化の進み方は変わるとされています。例えば、住戸数や利用者が多く運行回数の多い建物、高温・多湿になりやすい機械室や昇降路、沿岸部で塩害の影響を受けやすい建物などでは、部品の摩耗やさびが進みやすく、劣化が早まる傾向があります。

対象のエレベーターの利用状況や設置環境を踏まえ、点検報告書で劣化に関する指摘が出ていないか確認しておきましょう。なお、対象のエレベーターの駆動方式(ロープ式・油圧式など)は、屋上の機械室の有無やかご内の銘板から確認できます。駆動方式ごとの特徴は以下のページで解説しています。

耐用年数を過ぎたエレベーターを使い続けるとどうなるか

不具合・故障のリスクが高まる

経年劣化が進むと、ドアの開閉不良や異音、着床レベルのずれといった不具合が現れやすくなります。

修繕費用がかさみやすくなる

耐用年数を過ぎたエレベーターは、部品の摩耗や電子基板の経年劣化により、個別の修理を繰り返すことになりがちです。修理費が都度積み重なると、結果的にリニューアルに近い費用がかかる場合も珍しくありません。修理の見積もりが届いた際には、リニューアルした場合の概算もあわせて確認しておきましょう。

法令上「既存不適格」になっている場合がある

設置当時は適法であっても、その後の法令改正によって現行の基準を満たさなくなった設備は「既存不適格」と呼ばれます。ただちに違法となるわけではありませんが、法令改正は過去の事故や災害を教訓としているため、戸開走行保護装置など安全装置の設置状況は把握しておく必要があります。定期検査の報告書で安全装置の設置状況を確認し、不明な点はエレベーター会社に問い合わせておきましょう。

資産価値への影響

古いエレベーターは、賃貸募集時の印象や売却時の評価にも影響することがあります。そのため、安全性の確保に加えて、資産価値を維持する観点からも計画的な更新が検討されることがあります。対象のエレベーターの設置年から、更新時期の目安を把握しておきましょう。

保守会社の選定にも指針がある

保守は設置メーカー以外の会社に切り替えることも可能ですが、過去に重大な事故が発生した経緯から、保守点検業者の選定にあたって留意すべきチェックリストが国土交通省により策定されています。耐用年数の判断とあわせて、対象のエレベーターの保守体制も一度見直しておきましょう。

参照元:国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000607.html)

対象のエレベーターの耐用年数を見極める4つのポイント

設置からの経過年数(築年数)

まずは設置年・稼働年数を確認することが出発点です。かご内の銘板や竣工図書で、設置年を確認しておきましょう。

法定点検・保守点検の結果

建築基準法により、エレベーターは原則として年1回、資格者による定期検査を受け、その結果を特定行政庁へ報告する義務があります(定期検査報告制度)。この報告内容に加え、日常の保守点検で指摘されている内容も重要な判断材料です。指摘事項が積み重なっている場合は、リニューアルの検討時期に近づいていると考えられます。直近の点検報告書の内容を、あわせて見直しておきましょう。

部品供給終了の予告有無

保守会社・メーカーから部品供給終了の案内が来ていないか、あらためて確認しておきましょう。

「更新年数」という考え方(修繕計画上の目安)

一般的に、長期修繕計画では、エレベーターの更新(交換)を何年目に見込むかという「更新年数」の考え方が使われます。計画上の更新時期と、設置年・点検結果から見た実際の状態にずれがないか確認しておきましょう。マンションにおけるエレベーター交換の具体的な進め方を知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

耐用年数は保守・点検で延ばせるのか

適切な保守・点検を継続することで、安全に使用できる期間を延ばせる可能性はあります。ただし、部品供給の終了や重大な劣化には保守だけでは対応しきれません。延命を図るか、リニューアルに踏み切るかは、主要機器の状態を確認したうえで判断することが大切です。まずはエレベーター専門会社による現地調査で、主要機器の現状を把握しておきましょう。

耐用年数を迎える前に準備しておきたいこと

点検記録・竣工図書を整理しておく

設置年や過去の点検指摘事項、保守履歴は、リニューアルを検討する際の見積もり精度にも影響します。竣工図書や点検報告書は、日頃から整理・保管しておきましょう。

長期修繕計画上の更新時期を確認しておく

マンションの場合、エレベーターの交換費用は一般的に修繕積立金から拠出されます。計画的耐用年数の目安(20~25年)を踏まえ、長期修繕計画に記載されているエレベーター更新の時期や計上額が、いつ時点の情報に基づくものかを確認しておきましょう。マンションのエレベーター交換に関する費用負担の一般的な考え方は、以下の記事で解説しています。

耐用年数が近づいたら:改修工事(リニューアル)の検討へ

改修工事(リニューアル)をすると耐用年数はどうなるか

改修工事(リニューアル)で制御盤や巻上機などの主要機器を新しくすると、更新した機器については新たに耐用年数の目安が始まります。一方、工法によっては既存のまま残す部分もあるため、残す部分の状態によっては、その後に追加の工事が必要になるケースもあります。工事方法(全撤去・準撤去・制御改修など)によって工事範囲や費用、工期が異なるため、詳しくは以下のページをご覧ください。

マンションの場合は管理組合での検討が必要

マンションの場合、交換(リニューアル)には一般的に、総会での決議や修繕積立金の活用など、区分所有者の合意形成のプロセスが必要になります。進め方の一般的な流れは以下の記事で解説しています。

エレベーターの耐用年数に関するよくある質問

Q. 耐用年数を超えて使い続けると罰則はある?

法定耐用年数の経過自体に罰則はありません。ただし、法定検査や点検で指摘された不具合を放置し、事故につながった場合は、管理者としての責任を問われる可能性があります。指摘事項は放置せず、早めに対応を検討しましょう。

Q. 「寿命」と「耐用年数」は同じ意味?

「寿命」は実際に安全に使える期間を指す一般的な表現として使われることが多く、「耐用年数」は法定耐用年数・計画的耐用年数など複数の定義を持つ言葉です。資料によって使われ方が異なるため、どの意味で使われているかを確認しながら読み進めることが大切です。

Q. 耐用年数はメーカーによって違う?

メーカーによる違いよりも、稼働頻度や設置環境(温度・湿度・塩害など)によって、劣化の進み方に差が出るとされています。一方で、部品の供給期間はメーカーや機種によって異なるため、部品供給終了の時期が実際の更新タイミングに影響することがあります。対象のエレベーターについて、部品供給終了の予告が出ていないか確認しておきましょう。

Q. マンションの場合、耐用年数の判断は誰がするもの?

分譲マンションの場合、最終的な交換の可否は管理組合の総会で決議されるのが一般的です。賃貸マンションの場合は、オーナーが判断します。いずれの場合も、判断材料となる設置年・点検結果・部品供給状況といった設備の情報は、エレベーター会社から得ることができます。点検報告書や部品供給に関する案内を、すぐに確認できる状態にしておきましょう。

まとめ|まずは設置年と点検結果を確認しよう

法定耐用年数(17年)と実際に使える年数(20~25年)は、目的の異なる別の指標です。対象のエレベーターの状態は、設置からの経過年数・点検結果・部品供給状況、さらに稼働頻度や設置環境など、複数の視点から総合的に判断する必要があります。まずは銘板や竣工図書で設置年を確認し、直近の点検報告書に目を通しておきましょう。

弊社は、メーカー品質を備えつつ複数メーカーの既設エレベーターに対応する「第3の選択肢」を創り出しました。部分改修から全撤去まで、対象のエレベーターの状態に応じたリニューアルをご提案します。耐用年数の判断材料となるエレベーターの状態確認から、工法のご提案、お見積もりまで対応します。他社からの切り替えもお任せください。

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